貸店舗・貸事務所の募集前に確認したい「用途地域」と「建物用途」
空いている店舗や事務所を所有していると、「まずは募集広告を出して、借りたい人を探そう」と考えるのが一般的です。
しかし、空室になっている建物だからといって、どのような店舗や事業所でも自由に募集できるとは限りません。
貸店舗・貸事務所の募集では、賃料、広さ、設備、立地などに加えて、予定している業種や使用方法が、その土地と建物で認められるかを確認する必要があります。
確認が不十分なまま募集や契約を進めると、契約後に営業できないことが分かり、貸主・借主双方に大きな負担が生じる可能性があります。

用途地域によって建築物の用途が制限されています
市街化区域内の土地には、原則として「用途地域」が定められています。
用途地域は、住居、商業、工業などの土地利用を適切に分け、地域の環境を守るための制度です。
用途地域ごとに、建築できる建物や使用できる用途が定められており、店舗、事務所、工場、倉庫などについても、業種や規模による制限があります。
たとえば、住宅地としての環境を保護する地域では、店舗や事務所として使用できる面積や種類が制限されることがあります。
そのため、募集広告に「店舗可」「事務所可」「業種相談」と記載する前に、まず、その場所の用途地域と用途制限を確認する必要があります。
用途地域だけでは判断できません
用途地域を確認して、予定する業種が一見可能に見えても、それだけで営業できると判断することはできません。
貸店舗・貸事務所の募集では、土地の制限に加えて、建物自体の状況も確認する必要があります。
建築確認上の建物用途
建物には、建築確認を受けた際の用途があります。
現在は空室であっても、建築確認上は住宅、共同住宅、事務所、店舗、倉庫など、特定の用途で建築されているのが通常です。
これまでと異なる用途で使用する場合は、その変更が認められるか、建物が変更後の用途に必要な基準を満たしているかを確認しなければなりません。
確認済証、検査済証、建築計画概要書、台帳記載事項証明書などが、建物用途や建築当時の状況を確認する手掛かりになります。
ただし、古い建物では資料が残っていない場合や、増改築によって現況と当初の資料が異なっている場合もあります。
用途変更手続きの要否
建物を従来とは異なる用途で使用するときは、「用途変更」に関する確認が必要になることがあります。
確認申請が必要になるかどうかは、変更後の用途、使用する部分の面積、従前の用途との関係などによって異なります。
また、規模などの関係で建築確認の手続きが不要な場合でも、建築基準法上の基準に適合しなくてよいということではありません。
避難経路、防火区画、内装、採光、換気、廊下や階段などについて、変更後の用途に応じた確認や改修が必要になる場合があります。
地区計画や管理規約などの制限
用途地域とは別に、地区計画、建築協定、管理規約、賃貸借契約上の制限などが設けられている場合があります。
区分所有建物では、法令上は可能な用途であっても、管理規約によって店舗利用、飲食店、臭気や騒音を伴う営業などが禁止されていることがあります。
貸主が承諾していても、管理組合や建物全体のルールに反する用途で使用することはできません。
消防・保健所・各種許認可の条件
飲食店、美容所、福祉施設、保育施設、診療所、宿泊施設などは、事業を始めるために消防、保健所その他の行政機関への届出や許可が必要になることがあります。
業種によっては、用途地域上の制限だけでなく、次のような事項が問題になります。
・避難経路や非常口
・自動火災報知設備などの消防設備
・給排水、換気、排気設備
・電気やガスの容量
・客席や厨房の配置
・採光や換気
・周辺施設との距離
・建物の構造や階数
不動産として「店舗利用可能」であることと、希望する営業許可を取得できることは、必ずしも同じではありません。
募集時によくある誤解
「以前も店舗だったから、次も店舗として使える」
以前のテナントが営業していた事実だけでは、次のテナントも同じように営業できるとは限りません。
同じ店舗でも、物販店、飲食店、美容室、福祉施設などでは、必要な設備や法令上の条件が異なります。
また、以前の使用方法が適切であったか確認できないケースもあります。
「貸主が承諾すれば営業できる」
貸主の承諾は、賃貸借契約上の重要な条件です。
しかし、貸主が承諾しても、用途地域、建築基準法、消防法、管理規約や許認可上の問題が解消されるわけではありません。
貸主の承諾と、法令上・行政手続上の可否は分けて考える必要があります。
「ポータルサイトに掲載されているから問題ない」
不動産ポータルサイトに「店舗可」「事務所可」などと掲載されていても、希望する業種で使用できることまで保証されているとは限りません。
広告掲載時に想定していた業種と、実際の申込業種が異なる場合もあります。
募集情報は検討を始めるための資料であり、最終的には物件と事業内容を個別に確認する必要があります。
「小規模だから確認しなくてもよい」
小規模な店舗や事務所でも、用途地域、管理規約、消防、保健所などの制限を受けることがあります。
建築確認の手続きが不要であることと、その用途で適法に使用できることは同じではありません。
面積が小さいという理由だけで、確認を省略することはできません。
確認不足のまま募集・契約するリスク
用途や法令上の条件を確認しないまま契約を進めると、次のような問題が生じる可能性があります。
・希望する営業許可を取得できない
・内装工事を始めた後に計画変更が必要になる
・追加の消防設備や改修工事が必要になる
・開業予定日に営業を始められない
・契約解除や費用負担をめぐって争いになる
・再募集が必要になる
・貸主の説明内容が問題になる
借主は、物件取得費、設計費、内装費、設備費、求人費、広告費など、開業前から多額の費用を負担します。
貸主側も、契約後に使用できないことが分かれば、賃料収入を得られないだけでなく、原状回復や再募集、預り金の返還などに対応しなければなりません。
募集前の確認は、借主だけでなく、貸主のリスクを減らすためにも重要です。
貸店舗・貸事務所の募集前に確認したい項目
募集を開始する前に、少なくとも次の事項を整理しておくことをおすすめします。
・所在地の用途地域と用途制限
・市街化区域か市街化調整区域か
・建築確認上の建物用途
・確認済証、検査済証、建築計画概要書などの有無
・増改築や用途変更の履歴
・予定する業種と具体的な使用方法
・用途変更手続きの要否
・地区計画、建築協定、管理規約の制限
・消防設備と避難経路
・保健所その他の許認可条件
・給排水、電気、ガス、換気、排気設備
・営業時間、騒音、臭気、看板などの募集条件
すべての業種について、募集開始前に営業可否を確定することは難しい場合もあります。
その場合は、募集広告に「店舗可」と広く記載するのではなく、相談できる業種、確認が必要な事項、借主側で行うべき調査などを明確にしておくことが重要です。
募集条件は物件ごとに整理する必要があります
事業用不動産では、同じ地域にある似たような建物でも、建築時期、建物用途、構造、設備、管理規約などによって、受け入れられる業種が異なります。
そのため、単に周辺の募集事例を参考にして賃料を決め、ポータルサイトへ掲載するだけでは不十分です。
物件の状況を確認し、どのような業種を受け入れるのか、どの範囲まで工事を認めるのか、確認や許認可の責任をどのように分担するのかを整理したうえで募集する必要があります。
募集条件を適切に整理することは、入居後のトラブルを防ぐだけでなく、その物件に適したテナントへ情報を届けることにもつながります。
株式会社ビズエステートの対応
株式会社ビズエステートでは、船橋市を中心に、貸店舗・貸事務所などの事業用不動産を取り扱っています。
空室物件の募集にあたっては、賃料や広告方法だけでなく、物件の状況、建物用途、想定する業種、設備や契約条件などを確認しながら、募集方針を整理します。
必要に応じて、行政窓口、建築士、消防署、保健所その他の関係機関への確認が必要となる事項も整理し、貸主・借主双方が認識を共有できるよう調整します。
「どのような業種で募集すればよいか分からない」
「以前は店舗だったが、現在も同じように貸せるか不安」
「古い建物で資料が揃っていない」
「他社で募集しているが、条件設定に不安がある」
このような場合も、募集を始める前の段階からご相談ください。
(別ページ)不動産の賃貸に不安がある所有者さまへ
船橋市・市川市・習志野市・鎌ケ谷市などで、空室店舗や空室事務所の募集をご検討の所有者様をサポートしています。
※本記事は、貸店舗・貸事務所の募集に関する一般的な情報を記載したものです。実際の法令適合性、用途変更手続きや許認可の要否は、所在地、建物、規模、業種、使用方法などによって異なります。個別案件については、行政庁、指定確認検査機関、建築士、消防署、保健所などの関係機関へご確認ください。

