今回は、定期建物賃貸借契約について書いてみようと思います。

定期建物賃貸借契約とは、ざっくり言うと更新が無く期間満了で終了する、建物賃貸借契約をいいます。

貸した物件を解約できない問題

普通賃貸借契約では、いちど賃貸借契約を締結すると、貸主都合での解約はとても大変です。

裁判を起こしたとしても、余程の事情が無くては認めてもらえません。

立ち退き料を払って出て行ってもらう場合がありますが、

払えば解決という単純なことではなく、あくまで正当事由の補充的な役割となるため、

借主が協力的でない場合、解約は非常にハードルが高く、時間とお金が相当必要になるものです。

賃貸借契約は10年、20年と続くこともあるので、

契約時点で老朽化してる建物や、将来自分で使う可能性がある建物は注意が必要です。

 

計画的に解約できる賃貸借契約

貸主からの解約は難しい建物賃貸ですが、定期建物賃貸借契約を使うことで

計画的な建物活用が可能となります。

お伝えした通り定期建物賃貸借契約は期間を定め、期間満了と同時に契約が終了します。

更新の概念がないので、法定更新も起きません。

借主は満了で明け渡す義務があり、原状回復を終えている必要があります。

期間の定めは1年未満の短期でも、10年以上の長期でも自由に行えます。

 

定期建物賃貸借契約に必要な手順

定期の場合は普通より事務が多くなります。

1 定期建物賃貸借であることの貸主からの告知

2 重要事項説明

3 契約締結

4 満了の1年から半年前までに契約が終了することの貸主からの通知

5 満期により終了

6 (再契約)

※法定要件として定期契約は公正証書等の書面により締結する必要があります。

また、貸主からの通知が契約前と満了前(期間が1年以上の場合)に必要です。

第三節 定期建物賃貸借等
(定期建物賃貸借)
第三十八条 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
2 省略
3 第一項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
4 省略
5 建物の賃貸人が第三項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
6 第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。
7 第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。
8 前二項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
9 第三十二条の規定は、第一項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない。

引用-「e-Gov法令検索」借地借家法第3章第3節より

第三十八条2項と4項は電磁的手続きについて書かれています。興味のある方は引用元にてご確認ください。

定期建物賃貸借のデメリット

期間を定めて計画的に活用できる定期賃貸借ですが、デメリットもあります。

1 長く使いたい借主からは避けられるため、入居者が決まりにくい

2 同じ理由で賃料が相場より安くなる

3 定期契約の成立要件を間違いなく満たし、終了通知を確実に行う必要がある。

特に3にミスが起きてしまうと、期間の定めのない賃貸借となったり、

明渡しが遅くなったりと、計画が大きく崩れてしまいます。

また、手順の6に括弧で記載しましたが、終了時に再契約を行うことは可能です。

ただし、再契約を更新と同じ程度に考えていては、思わぬトラブルが起こり得ます。

契約の中で再契約という文言の使い方にも、注意が必要です。

 

まとめ

自分で使う可能性がある、見知らぬ相手に貸すのは抵抗がある、老朽化が進んでいる、などの場合は

定期建物賃貸借を検討しても良いと思います。

ですが、何にでもメリットとデメリットがあります。

普通ではないもの=特別なもの(定期)を使うときは効果をよく検討し、

特別であることを否定されないように、正確な手続きを取れる業者に依頼することをお勧めします。

また、ここでは事業用物件を前提に定期建物賃貸借契約について書きましたが

建物、土地、居住用、事業用で、それぞれ違いがあります。

ここに書いたことはホンの一部分でしかありませんので、

実際にどのような契約を結ぶかは、不動産屋さんと相談してご検討ください。

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